■都立高校の学校図書館は、ビル管理・警備・清掃・害虫駆除業者が受託して運営する異常事態
今回は学校図書館の話題に触れます。発端は、図書館司書求人サイト「図書館ジョブ」で見つけた求人です。それは、東京都立高校図書室の業務委託求人です。都立高校も委託化が進んでいるようですが、その受託業者を見て唖然としました。
▼その求人がこれです(2016年4月に掲載されたもの)
<急募>多摩地区/都立高校図書館の司書・司書補有資格者
光管財株式会社です。当社は都立高等学校図書館管理業務を受託している会社です。
○勤務地: 日野市・国立市・小平市・小金井市・田無市・西東京市・東久留米市
○業務内容: 貸出返却・レファレンス・選書・装備と多岐にわたります。
○待遇: パートスタッフ※年度更新有
○給与: 時給920円※交通費一日上限500円
○資格・経験: 司書・司書補の有資格者 ※公立図書館の勤務経験者
○就業時間: 8:00-22:00(シフト制)
○勤務開始日: 即日勤務スタート
受託業者の名前が「光管財」と書かれているので、いかにも図書館とは縁のなさそうな感じ。調べると、東京都足立区にある会社のようで、建物の清掃・設備管理、警備、害虫駆除、造園をメインに人材派遣業や学校用務にも手を広げている会社とわかりました。
これは、ひょっとしたら、他の都立高校の図書館業務も、こうした図書館に無縁な業者が受託しているのかもしれないと思い、東京都が公開している「東京都入札情報サービス」で調べてみることにしました。都立高校の業務委託の契約手続きは、ネット上の電子入札で行い、一番安い価格で入札した業者が落札する「希望制指名競争入札」で行われます。事前に会社情報の登録や経営状態、プライバシーマークを取得しているか等、いくつかの基準があり、それらを満たせば申請できます。とは言っても、まともな企業ならクリアできる基準です。入札価格だけで決まるので、指定管理者のような厳しい選考基準や評価の土俵に上がることはなく、素人業者でも仕事を獲得できる可能性があるのです。
そして、検索してみると、驚くべき実態の発見がありました。その落札情報の検索結果の一例が以下の通りです。注目したのは、落札(受託)業者です。2016年(平成28年)4月18日時点の検索結果を表記。
■落札者情報
契約部署: 財務局経理部契約第二課
開札日時: 平成28年2月24日
件名: 都立一橋高等学校外10図書館管理業務委託
契約部署: 財務局経理部契約第二課
開札日時: 平成28年2月24日
件名: 都立一橋高等学校外10図書館管理業務委託
落札金額: 53,895,473円
落札者氏名: 株式会社エースシステム
落札者氏名: 株式会社エースシステム
都立一橋高校の外10校(※外の10校がどこかは、わかりません)の業務委託を落札したのは、(株)エースシステムという業者。建物・ボイラー・浄化槽・貯水槽清掃 、電気・暖冷房等設備保守、警備、害虫駆除がメイン業務のようです。そして、他にも複数の検索結果が出ました。以下、高校名と落札業者のみ記載します。
◆都立江北高等学校外10校
落札者氏名: 株式会社クリーン工房
落札者氏名: 株式会社クリーン工房
この会社は、ビルメンテナンス(管理、清掃、警備)業がメインのようで、様々なアウトソーシング業にも手を出しています。本社はさいたま市にあります。
◆晴海総合高等学校外10校
落札者氏名: 株式会社エースシステム
落札者氏名: 株式会社エースシステム
◆大崎高等学校外10校
落札者氏名: 株式会社秀光
この会社は東京都葛飾区にあり、ビル管理、清掃 、警備がメイン業務のようです。
この会社は東京都葛飾区にあり、ビル管理、清掃 、警備がメイン業務のようです。
◆戸山高等学校外10校
落札者氏名: 株式会社ケー・デー・シー
落札者氏名: 株式会社ケー・デー・シー
システムや情報サービスをメインにアウトソーシング業も行っており、都内の図書館業務受託の実績があります。しかし、薄給な求人ばかりです。
◆練馬高等学校外10校
落札者氏名: 株式会社ケー・デー・シー
落札者氏名: 株式会社ケー・デー・シー
◆富士森高等学校外10校
落札者氏名: 株式会社バックスグループ
販売員の派遣業をメインに、近年は日本年金機構委託の国民年金保険料収納事業の業務を行っています。
◆片倉高等学校外10校
落札者氏名: 光管財株式会社
落札者氏名: 光管財株式会社
◆日野台高等学校外10校
落札者氏名: 光管財株式会社
落札はできませんでしたが、この他にも、以下の業者が参加していました。
・日建総業株式会社(製造業派遣)
・株式会社サービスエース(ビル管理、清掃)
・株式会社アイビーメンテナンスビル管理、清掃
・株式会社エイト(ビル管理、不動産)
酷いの一言。ビル管理、警備、清掃業者ばかり。何なのこれ?これらの業者は、図書館運営のノウハウなど微塵もなく、人材を現場へ垂れ流すだけで利益を得ようとしているわけ。タチが悪いにも程がある。東京都も舐められたもので、入札方法にも問題がある。民間業者が能力もないのに手を広げ、税金を財源とする公的な仕事を貪ることは許されない。
求人へ応募する方は、しっかりと考えてもらいたい。業者の事をろくに調べず応募することは無謀な行動。都立高校図書館の求人への応募は控えた方が無難である。
【補足】
●東京都入札情報サービスの使い方
[PC版]
1. メニューの入札(見積)経過情報を選ぶ
2. 必須条件の「物品等」にチェックを入れる
右にある「営業種目の一覧表」をクリック
「+委託・その他」を選ぶ
「+135事務支援」⇒「08図書等整理業務」を選択
中央にある「選択>>」をクリックすると右枠に項目が表示される
下にある「選択」をクリック
3. 必須条件の「開札(見積)日別選択」で確認したい月にチェックを入れる
4. 一番下にある「検索」をクリック
5. 検索結果が表示されます
2. 必須条件の「物品等」にチェックを入れる
右にある「営業種目の一覧表」をクリック
「+委託・その他」を選ぶ
「+135事務支援」⇒「08図書等整理業務」を選択
中央にある「選択>>」をクリックすると右枠に項目が表示される
下にある「選択」をクリック
3. 必須条件の「開札(見積)日別選択」で確認したい月にチェックを入れる
4. 一番下にある「検索」をクリック
5. 検索結果が表示されます
[モバイル版]
1. メニューの入札(見積)経過情報を選ぶ
2. 調達区分
「物品」を選択
3. 業種営業種目の選択
「委託・その他」を選択
「事務支援」を選択→決定
3. 業種営業種目の選択
「委託・その他」を選択
「事務支援」を選択→決定
4. 開札(見積)日別選択
「全ての年月」を選択→決定
さらに絞り込む項目に
5. 取り扱い部署の選択
5. 取り扱い部署の選択
「財務局」と「教育庁」と「教育長(高等学校)」を選択
6. 検索
7. 検索結果が表示されます
※モバイル版は、業種営業種目を詳細に絞り込めないため、他業種の結果も反映され、検索結果が多くなります。PC版の利用をお奨めします。
この記事へのコメント
「+190その他の業務委託」⇒「13図書等整理業務」
だったものが
「+135事務支援」⇒「08図書等整理業務」
になっています。
東京都の事業評価も
「Ⅰ 事後検証による評価」だったものが
http://www.zaimu.metro.tokyo.jp/syukei1/zaisei/24jigyouhyouka/01_24jigo.htm
平成28年度から
「Ⅷ 複数年度契約の活用を図る事業評価」に変更です。
http://www.zaimu.metro.tokyo.jp/syukei1/zaisei/29jigyouhyouka/29jigyouhyouka.html
怖い怖い・・
キティ
なんとPC用のウェットティッシュが無い!
で、ぞうきんを水道水に浸して固くしぼり、キーボードを拭いている人がいて
呆れて、それじゃ故障するわとやめさせました。
それよりも前からいた司書の品位のなさ。
前職が足立区の公立図書館勤務(パートですわ)と聞いて納得しました。
ケーデーシーの面接担当者は「図書館司書の資格取りたいが忙しくて」
通信制大学に在籍という方法あるのだけど。資格現在も取得していないとか。
これでは何かあっても責任取れない、
むしろ事故あった時に関わっていないのに責任とられる可能性有る。
その様な考えに至り、1ヵ月でやめました。
他の二人(一人は二十代某大文学部卒、もう一人は四十代某語専攻卒)
どうしているかな。
若い方にはあちこちで募集している正規雇用の司書職にチャレンジしてほしいな
こんなブログがあったとは…
去年サービスエース、今年秀光の元で高校司書業務を行っている者です。
サービスエースは1年目は褒められない状況だったようですが、2年目だった去年は資格保持者を雇い、大分現場との意思疎通が出来るようになっていた印象です。(物資の搬入も素早かったです)
秀光は担当者は資格はなく、そもそも連絡もままならない有様です。(物資はブッカー系以外は領収書制で会社のレスポンスも非常に悪い)
先日ようやく管財と合同の研修がありましたが、どこの学校も不満だらけでした。
そもそも学校の併設施設だと言うのに教育内容も分からずに本を選ばねばなりません。
教員も、書物を勉学よりは娯楽にしか見ていない人が多く、このような姿勢が無知な業者が落札という現状を招いたと察するとともに、彼らに教育される子供の成長に疑念が起きるほどです。
長々と失礼致しました。
都教委では、学校図書館の司書を募集しなくなって10年以上経ちます。今は定年等の体色による自然減で図書館司書ゼロになるのを待っている状況です。
代わりに、ここで触れられているような派遣の司書が来るのですが、ご本人の資質とは別の次元で困ったことが起きています。
一般に、学校図書館の貸出や蔵書整理は生徒が役割分担しています。派遣の司書さんは図書委員の生徒の指導ができないのです。
もし、学校の教員から依頼されて図書委員の生徒の世話などしようものなら、偽装請負で双方が責任を問われます。
また、開館日や時間帯は派遣元の指示によるので、各校の行事日程と合わず、開いていて欲しいときに閉館などということも珍しくありません。
学校図書館の教育機能はほぼ失われてしまいました。
図書館は買手市場ですから本当に給料が安いです。
だいたい時給900~1000円で雇いながら仕事量が多すぎる。
日本ではこれが普通なんですよね。
若いうちは情熱だけで安い賃金でも働けます。しかし歳を重ね、スキルも上がればそれに見合ったお給金は欲しくなるもの。
そうなるときちんとしたスキルを持つ人たちはどんどん業界から離れていきます。
私も今は司書として頑張っていますが、業界に対して絶望感しか感じていません。
どんな業者でも委託を受けられ、安い賃金で働かされる。
日本の図書館業界はおかしいと思います。
あ
東京都はちゃんと業者を選んでほしい。特に教育現場です。入札情報サービスの項目が「物品」というのも悲しいですね。給食のおばさんも用務員のおじさんも「物品」。司書も「物品」で仕事は「図書等整理業務」です。悲しいです。
そっちはパートではなく正社員なんですが、ボーナスなしで月16万(基本給のみ支給)という酷さでハローワークの方にもそんな金額の案件では生活できないと紹介を断りました。
こんな入札ばかりじゃ都立校のレベルが下がりそうですね。
ちなみにクリーン工房(横浜支社ですが)は横浜市中央図書館の業務委託を落札しています。
スタッフをコストとしか見れない最低な会社で1年で辞めました。