東京都立図書館・業務委託を受託する業者の実態【2016年度】

東京都立図書館は、港区にある中央図書館と立川市にある多摩図書館の2館があり、公共図書館の代表格ともいえる大規模図書館です。全国公共図書館協議会の事務局もおかれ、公共図書館のリーダー的存在でもあります。東京都は自治体として司書職制度があり、専任司書の方も両図書館に配属され業務を担っています。ここ数年、正規の新規採用も安定的に行われ、将来の運営を担う若手職員の確保が順調です。

しかし、ご多分に漏れず、閲覧業務や整理業務の委託化が進んでいるのも事実で、どういう業者が受託しているのか気になって調べてみました。

都立図書館の業務委託は、希望制指名競争入札という、公示をして、希望のあった入札参加有資格者(業者)の中から入札を行う方式です。その中で入札金額が一番安い業者が落札して受託します。指定管理者契約のような厳しい審査はなく、参加障壁が低いシステムです。ひいては、ノウハウと実績のない、図書館とは無縁な企業も仕事を獲得してしまう危うさがあります。以下は、東京都の入札情報サービスシステムの検索結果を基に、2016年度、都立図書館の各業務委託の落札結果をまとめたものです。

【閲覧業務】
○中央図書館資料出納業務
・落札者氏名 オーディーエー株式会社
・落札金額 145,735,200円
▼入札者氏名、入札金額
1 オーディーエー(株) 134,940,000円
2 マンパワーグループ(株) 136,480,000円
3 彩の国協同組合 136,997,800円
4(株)図書館流通センター 139,420,350円
5 日建総業(株) 190,000,000円

●オーディーエー株式会社 神奈川県横浜市、東京都大田区
・スポーツ施設運営管理(プール管理、水泳教室、スポーツ教室、ヨガ、フラダンス、スタジオ運営、イベント運営)
・ビル管理メンテナンス(警備、清掃、駐車場)
・ビューティー事業(ネイルサロン)
・特定労働者派遣(指導員・作業員・図書・一般事務等の派遣)

以降、他の業務は落札業者だけを記載します。

○多摩図書館資料出納業務
オーディーエー株式会社 神奈川県横浜市、東京都大田区
※落札後辞退

○都立図書館協力貸出業務
株式会社環境テクノ 神奈川県横須賀市
ホームページなし
・上下水道施設の運転維持管理
・一般産業廃棄物施設の運転維持管理
・汚水処理施設の運転維持管理

【整理業務・受入、書誌作成、装備など】
○都立図書館受入装備業務
オーディーエー株式会社

○都立図書館整理業務(書誌作成、修正)
ロジスティック・プランニング・スタッフサービス株式会社 東京都千代田区
・物流システムの設計、コンサルタント、業務請負、自動車運送取扱

○都立図書館逐次刊行物整理業務
社会福祉法人埼玉福祉会 埼玉県新座市
・福祉事業、図書館用品販売

○都立図書館洋書収集整理関連業務
日本データベース開発株式会社 東京都豊島区
・システム開発事業、コンテンツ事業

ざっと、こんな感じです。埼玉福祉会と日本データベース開発は、これまで各所で図書館業務の受託実績がありますが、それ以外は異業種です。スポーツ施設管理、ビル管理、清掃、物流業って、どうやって図書館業務のノウハウや知識を得るんですかね?

これ以外に、落選した業者も含めた入札参加業者について、検索結果を基に業種別に分けしてみました。

◆図書館関連業<取次、図書館用品販売、製本、データ作成など>
・図書館流通センター/TRC
・埼玉福祉会
・日本データベース開発
・マイトベーシックサービス
・ナカバヤシ

◆施設管理、清掃、警備、害虫駆除
・オーディーエー
・光管財
・新さくら会協同組合
・彩の国協同組合
・フィット協同組合
・環境テクノ

◆公園、道路管理、上下水道施設管理、産業廃棄物施設管理
・日建総業

◆物流
・ロジスティック・プランニング・スタッフサービス
・日本通運

◆人材派遣業、アウトソーシング業
・ケー・デー・シー
・ヒューマントラスト
・マンパワーグループ

圧等的に異業種が多い。こんなのに任せて大丈夫なの?こうした、厳しい審査がなく、入札金額だけで決まるハードルが低いシステムは、ノウハウで勝負できない他業種、素人業者の格好のターゲットになるのです。公的機関の仕事は、人件費さえ削減すれば、ある程度の収益が確実に見込めるので、業者としては何としても獲得したいのです。

更に業者というものは、閲覧の仕事は素人でもできると考えている節があり、人さえ集めれば、後は現場にお任せというスタンスでやっています。公益性への貢献より、楽して稼げる美味しい仕事と捉えているのです。自治体も、こうした経費削減だけを目的にした委託ばかりしていると、民間業者のカモになるだけです。

もちろん、司書などの現場の担当者が、こうした委託化に賛同しているわけではなく、権限を持つ議会、財務局、教育委員会などが主導して進めます。こうした部署の人間は、図書館業界の事情に疎いのです。にわかに覚え込んだ、付焼刃的な知識とノウハウだけで受託する業者の実態を知らないから、こうした安直な入札システムだけで業者を選定してしまう現実があります。

以前、都立高校図書室の業務委託に関して、今回と同様の内容を書きましたが、都立図書館でも実態は同じであることがわかりました。改めて、業務委託を考え直すことが必要でしょう。

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