東京都立図書館の業務委託は、スポーツ施設運営管理や業種不明な業者が受託を独占する状態【2017年度】

前回の記事では、都立高校図書室の業務委託において、ビル・マンション管理業者ばかりが受託している実態を書きましたが、東京都が運営する二つの公共図書館である、都立中央図書館(港区)と都立多摩図書館(国分寺市)の委託も似たような状況です。今年も、3月1日に入札が行われ、結果が判明しました。

やはり、都立高校図書室同様に図書館とは無縁な業者が落札しました。都立図書館も入札金額が一番安い業者が落札して受託します。つまり、金額のみで決まります。また、同額だとクジ引きで決めます。指定管理者契約のような厳しい審査はなく、参加障壁が低いシステムです。そして、実績やノウハウで勝負できない業者の格好のターゲットになるのです

ただ、東京都は自治体として司書職制度があり、基幹運営は専任司書の方が業務を担っています。委託は部分的なものですから、業者が好き勝手にやって全体を混乱させることは、ほとんどないでしょう。たまに人員が確保できないとか、業務を遂行できるレベル以下のスタッフが担う事で現場が混乱する事はありますが・・・。

今回も委託案件ごとに結果をまとめてみました。

東京都入札情報サービスで閲覧した情報を基に、入札へ参加した会社名・主要業種、採用・落選・辞退の結果を明記します。株式会社表記は省略。契約期間は1年です。

◆受入、装備業務
[○採用] オーディーエー (スポーツ施設運営管理、ビル管理)
[×落選] 環境テクノ (業種不明)
[×落選] 彩の国協同組合 (業種不明)
[×落選] 図書館流通センター (書籍流通)
[×落選] 有隣堂 (書店)
[△辞退] ヒューマントラスト (派遣、アウトソーシング)
[△辞退] ロジスティック・プランニング・スタッフサービス (派遣、アウトソーシング)

◆協力貸出(ILL)業務
[○採用] 環境テクノ (業種不明
[×落選] ロジスティック・プランニング・スタッフサービス (派遣、アウトソーシング)
※環境テクノとロジスティック・プランニング・スタッフサービスは同額入札のため、クジ引きで環境テクノが決定。

[×落選] 有隣堂 (書店)
[×落選] 光商会 (不明)
[×落選] 図書館流通センター (書籍流通)
[△辞退] ヒューマントラスト (派遣、アウトソーシング)

◆図書整理業務
[○採用] オーディーエー (スポーツ施設運営管理、ビル管理)
[×落選] ロジスティック・プランニング・スタッフサービス (派遣、アウトソーシング)
[×落選] フィット協同組合 (不明)
[×落選] 埼玉福祉会 (福祉事業)
[×落選] 環境テクノ (不明)
[×落選] 日本通運 (物流)

◆逐次刊行物整理業務
[○採用] 埼玉福祉会 (福祉事業)
[×落選] ロジスティック・プランニング・スタッフサービス (派遣、アウトソーシング)
[×落選] 環境テクノ (不明)
[×落選] 日本通運 (物流)

◆出納業務(中央図書館)
[○採用] オーディーエー (スポーツ施設運営管理、ビル管理)
[×落選] 彩の国協同組合 (不明)
[×落選] マンパワーグループ (派遣)
[×落選] 図書館流通センター (書籍流通)

◆出納業務(多摩図書館)
[○落選] 彩の国協同組合 (業種不明)
[×落選] ナカバヤシ (製本、事務用品販売)

◆総合案内窓口業務(多摩図書館)
[○採用] オーディーエー (スポーツ施設運営管理、ビル管理)
[×落選] フィット協同組合 (不明)
[×落選] 有隣堂 (書店)
[×落選] 図書館流通センター (書籍流通)
[△辞退] ヒューマントラスト (派遣、アウトソーシング)

以上より、受託採用された業者は以下の4社です。

●オーディーエー(株)
東京都大田区矢口2-12-1
スポーツ施設運営管理、ビル管理など

●(株)環境テクノ
神奈川県横須賀市本町1-1
業種不明
HPなし

●彩の国協同組合
埼玉県さいたま市大宮区宮町5-66 iSメゾン大宮301
業種不明
HPなし

●(社福)埼玉福祉会
埼玉県新座市堀ノ内3-7-31
福祉事業、図書館用品販売


「環境テクノ」と「彩の国協同組合」は、会社HPが存在せず、正式な業種は不明です。それっぽい情報として、ビル管理、清掃、土壌調査、上下水処理、消毒、派遣業などを幅広く展開しているような記載を見つけましたが、はっきりとわかりませんでした。今時、公式サイトを持たない会社など、信用に値しません。

入札価格だけで決まる委託案件は、実績がない業者には参加しやすい土俵になります。とにかく、人件費を極限まで下げることを前提とした入札価格に設定すれば、落札できる確率が高くなるからです。一例として、スタッフの人件費を東京都の法令上の最低時給である1013円に設定した見積もりで入札する方法があります。こうしたやり方をしている業者は結構あります。

本来は、仕事の内容に見合う人件費が出せる価格帯で入札価格を設定し、適正な価格帯の範囲で入札競争をすれば良いのですが、いつの頃からか、価格破壊を起こすような、わけのわからない業者が参入してくるようになってしまいました。

また、都立図書館の委託は全て1年契約です。毎年、入札競争で勝つ必要があります。これは、非常にしんどいことです。採用されて勤務しても、毎年失業するリスクがありますので、応募を検討される方は、その辺もよく考えてから応募してください。

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