図書館業務委託ビジネスはコスト競争で消耗するジリ貧商売

今回は、図書館の委託業務や指定管理業務を請け負う、受託業者のビジネス環境ついて記事にしてみました。業務委託が浸透した図書館業界ですが、そのビジネス環境は厳しさを増し、少ないパイの奪い合いとなっています。民間委託の求人へ応募する方が、入社してから現実を目の当たりにして後悔することがないよう、覚悟と参考になればと思います。まず、参考程度に主要な参入業者を業種ごとに分けてみました。

[書店・取次]
図書館流通センター(TRC), 紀伊國屋書店, 丸善雄松堂, 有隣堂, ブックチェーン, 日販図書館サービス

[図書館関連製品販売・製本]
ナカバヤシ, 埼玉福祉会

[図書館整理業務(目録作成/・装備)]
マイトベーシック, 日本カタロゴス, 図書館資料整備センター, リブレスク

[システム]
日本データベース開発, システムズデザイン

[アウトソーシング・派遣]
キャリアパワー, 日本アスペクトコア, ヴィアックス, ウーマンスタッフ, リブネット, 図書館スタッフ, シダックス大新東ヒューマンサービス, 日本コンベンションサービス, ケーデーシー, リクルートスタッフィング, マイナビワークス, マンパワーグループ, アデコ, テンプスタッフ, パソナ, JR東日本パーソナルズ, パナソニックエクセルスタッフ, キャリアセンター, 日経サービス

[文書管理]
日本レコードマネジメント

[エンターテイメント]
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)

[物流]
日本通運
[ビル管理、警備]
光管財, 秀光, オーディーエー, エースシステム, サービスエース
[不動産]
エイト
[金属加工業]
トミテック
[機器部品販売]
グランディオサービス
[自動車販売/整備業]
ヤオキン商事
[清掃・浄化・消毒・駆除]
クリーン工房, 環境テクノ
[スイミングクラブ]
ティーエムエンタープライズ
[不明業種]
彩の国協同組合, フィット協同組合, 光商会


●競争は貧乏の始まり
ご覧の通り、これだけ多くの業者が参入する厳しい競争下のビジネスである。通常、ビジネスというものは、競合ライバルが増える程、値下げ競争という儲からないビジネスになっていき、ひいては収益の低下につながる。結果として、人件費を下げざるを得ないオチが待っている。

現在の図書館運営は規制緩和が進み、民間業者への委託や指定管理の方向にベクトルが向いている。参入障壁が低いために、この流れに乗ろうと多くの企業が参入してきた。書店のような、常に図書館と関わりのある業者を筆頭に、近年は、アウトソーシング業や派遣業からの参入が多くなっている。こうしたことを背景に捉えてみると、一見、図書館業務の受託ビジネスは、儲かるのではないかと錯覚してしまうかもしれない。

しかし、ビジネスとしては儲けにくいのが実情である。主な顧客となるのは自治体や大学だが、年々予算が縮小され、図書館に関連する経費を抑えてきている。その限られた予算の範囲で発注するため、箱物建築の様な大きな金額が動くことは、ほとんどない。ニッチな隙間産業で市場規模は小さい。

その割に受注獲得競争が激しく、落札額・契約料も下落している。常軌を逸した極限の低価格で入札する糞業者もあるし、一方で、無理やり値切りを要求する糞大学もある。そして、会社の利益を上げるために人件費を削ることになる。現場スタッフの雇用を全て非正規雇用で採用し、時給や交通費も極力抑え、ようやく利益が出るケースがほとんどである。それでも赤字になるケースすらある。

現状、図書館という狭い市場に対して参入業者が多く飽和状態である。経営学で使われる用語で、レッドオーシャン(血の海)という言葉がある。ライバルが多く競争が激しいという意味で例えられ、まさにそうした状況であると言える。対して、ライバルが少ないブルーオーシャン(青い海)であれば、価格競争が起きにくく利益を上げやすいのだが、それには当てはまらない。図書館ビジネスは、すでに旨味のない競争過多のビジネスと言える。利益的にも、人材の確保においても、自転車操業そのものである。図書館の仕事が安月給である主な理由は、こうした事が背景にある。

●それでも参入、継続する理由
利益が低いくせに競争が激しい儲からないビジネスにも関わらず、多くの業者が飛びつき、名ばかりの図書館ビジネスが横行しているのは、次のような理由がある。

・事業の多角化によるリスク分散
・参入障壁が低いので、副業的な目的で参入する
・本業が不振なので、会社の延命措置という補完的な措置
・自社商品、サービスの宣伝や営業機会を得るため

本当のところは、本業のサブ的な役割と宣伝のために参入しているわけで、自治体や大学に貢献するビジネスというのは、表向きの宣伝に過ぎない。そのレベルに到達している企業は、かろうじてTRC位しかない。利益を出し、大きく黒字化できるかと言えば、なかなか難しいものがある。

●立場と安定性が低い下請けの底辺ビジネス
このビジネスは、自治体や大学などの発注者がいて、民間業者が下請けとして受注する仕組みになっている。下請けだと、受注側は常に立場が弱くなる。自ら仕事を生み出せないので、常に待ちの体制になり、発注側の意向に左右される。階層関係が出来上がっており、少々無茶な要求にも、首を縦に振るしかない場面もある。常に入札や契約を繰り返す、将来的な不確実性が非常に高い水モノ商売である。当然、雇用の安定性もマイナスに影響する。

・少ない正社員とバイト主流の構図
・時給が低い、年収が低い
・利益が出せず、赤字になりやすい
・継続性がなく、生き残りにくい

●業界の勢力(パワーバランス)
競争過多と言っても、近年は、ある程度、業者間の勝敗が見えるようになってきた。求人サイトを観察していればよくわかる。館種別には、以下の通りである。※あくまでも、受注獲得傾向による視点であり、業者の質の善し悪しを決めるものではありません。

[公共図書館]
図書館流通センター(TRC)の圧勝状態である。完全な一社勝ち状態で、47都道府県制覇も近いかもしれない。委託事業の創成期からの先行者利益を活かしたビジネス展開をしている。それに続くのが、ヴィアックス、丸善あたり。ただ、その差は大きく、1位と2位以下の差が大きく開いている。まともに勝負しても、書類・プレゼン・実績で勝つのは難しく、入札単価を下げる位しか対抗手段がない。

[大学図書館]
キャリアパワーに勢いがあるが、仕事内容と見合わない時給が多く、低価格で契約していると思われる。首都圏や関西圏の私立大学を中心に受託し、図書館だけでなく、一般事務も受注しているケースが多い(むしろ、こちらがメイン)。それに続くのが、紀伊國屋書店、丸善、日本アスペクトコアだが、以前より勢いがなくなっている。

[学校図書館]
公共図書館同様に図書館流通センター(TRC)が強いが、リブネットという、三重県伊勢市に本社がある地方企業が台頭し、首都圏にも進出している。この分野の新勢力になっている。

[独自路線]
公共図書館の夜間業務、土日祝祭日業務のような、あまり日の目を見ない不人気分野の仕事に注力する業者が、ナカバヤシとウーマンスタッフだ。他社があまり参入しないような隙間を責め、競合を避ける狙いだろう。ただ、人気がないので、人材確保は難しいと思う。

ここに挙がらない多くの業者は、受注数が少なく、ビジネスというレベルに達していない。競争的には、負け組と言える。

●労働者が考えるべきこと
人が仕事をするのは、生活するお金を稼ぐためである。しかし、図書館の非正規雇用だと稼げない事は目に見えているわけで、好きだからとか、やりがいがある等の理由は、おめでたいことを言っている綺麗ごとに過ぎない。やりたいことと稼げることは、別であることに気付くことが重要である。セレブな主婦や財力がある家庭の方なら、それ程気にしなくてもいいのかもしれないが、そうではない大多数の人は、自分にとって正しい方向性を見出さなければ、茨の道が待っている。今一度、考えてもらいたい。

図書館関連の民間業者に身を置いても、残念ながら先行きは厳しい。高学歴、資格、免許、スキルがあっても稼げないのである。責任者レベルでも、ボーナスなし、退職金なしは当たり前で、毎年、契約更新できるか、常に不安の中での契約となる。もし、民間企業で働くなら、これから成長する業界で働くべきである。残念だが、書店や図書館関連企業は、それと逆行する業界である。

ただ、考え方や視野を柔軟にしてみれば、絶望的になる事はない。もし、どうしても図書館で働きたくて、仕方なく非正規で働くならば、副業的な事も無理のない範囲でやってみるのもいいかもしれない。知人で、図書館ではないが、非正規で働いて、副業として自分で撮影した写真を販売したり、ブログを書いて広告収入を得たりなど、ネットビジネスをしている。あくまでも一例だが、自分の好きな事や得意な事で、お金に換えられる副業的手段を模索する事も、選択肢としてありだろう。

話が逸れてしまったが、図書館ビジネスは収益を上げるのが困難な商売のため、仕事に見合う対価として給料に反映されない。求人に応募する際は、その辺を覚悟しておかなくてはいけないのである。図書館の仕事で飯を食っていくには、正規雇用で公務員司書か国立大学職員として働くしかないのである。

この記事へのコメント

  • 通りすがりの者

    金属加工業のトミテ●クさんは、いくつかの不祥事を起こしたため、区の仕事を2年前にすべて失いました。政治家の口ききによって、また公共の仕事を復活させるかもしれませんが。
    2017年09月12日 14:35