横浜市・さいたま市の学校司書募集求人は職務内容に見合わないヒドイ待遇だ!

今年度も国立大学図書館や公立図書館の採用試験が一段落しました。この時期になると、来年度の非正規採用求人が増え始めますが、その中には学校図書館司書の募集も含まれます。今回は、学校司書の求人、とりわけ自治体教育委員会の直接雇用で採用している、横浜市とさいたま市の求人を例に挙げ、問題点につっこみを入れたいと思います。

近年、公立学校の学校図書館は、民間委託運営される自治体が増加していますが、この二つの政令指定都市は、今でも直接運営しています。しかし、その待遇は、責任と職務内容にまるで見合わない呆れる内容です。

まずは、横浜市、さいたま市の平成30年度・学校司書募集の求人内容を公式サイトの情報源をもとに、主要部分を簡潔にまとめたものをご覧ください。※情報源は公式サイト採用ページを参考


11月15日(水)まで消印有効

○募集人数 130人

○身分、報酬
・非常勤特別職職員
・時給1100円(別途、交通費の支給はありません。自動車通勤は禁止です。)

○雇用期間
2018年4月1日以降~2019年3月31日までの1年間
※勤務成績が良好な場合は、更新することがあります。ただし、更新する場合でも4回まで、かつ65歳までとなります。
※採用は欠員が生じた場合に随時決定します。欠員の状況により、必ずしも採用されるとは限りません。

○勤務場所
横浜市立学校(小学校、中学校、義務教育学校又は特別支援学校)のいずれか1校
※勤務地の指定はできません

○勤務日、勤務時間
・原則として土・日・祝日等を除く、週5日勤務
1日6時間以内×週5日、週29時間程度
※勤務日、時間等の詳細は、学校の授業予定に合わせ学校長が決定。
・年に10回程度の研修

○求める人材
・本市の学校教育を理解し、学校図書館を活用した教育に意欲のある人
・図書館や学校図書館に関して識見のある人
・子ども、教職員、学校図書館ボランティアときめ細やかにコミュニケーションがとれる人

○主な業務内容
・司書教諭補佐
・学校図書館の蔵書管理、環境整備
・本の貸出、返却作業
・レファレンス
・学校図書館を活用した授業への支援
・資料収集
・児童生徒の図書委員会、学校図書館ボランティア、他機関との連携

○受験資格
・2018年4月1日現在、20歳以上65歳以下の方
・特別選考枠は、2013年4月1日~2018年3月31日の期間、学校司書としての勤務経験が通算3年以上ある方(見込み含む)

○選考区分・方法
[一般選考]
・作文「横浜市が目指す学校図書館の趣旨をふまえ、あなたが学校司書として取り組みたいことを具体的に書いてください。
・実技「小学校1年生~中学校3年生を想定して、想定した学年を対象とした本の紹介(3分以内)を実演。紹介する本を持参してください。
・面接

[特別選考]
・論文課題「あなたが学校司書として取り組んできたこと、今後、取り組んでいきたいことを次の2つの観点から具体的に例を挙げて書いてください。学習・読書センターとしての学校図書館、読書センターとしての学校図書館
・面接

※募集要項PDF


10月31日(火)まで必着

○募集人数 160名程度

○任期 平成30年4月1日から1年間

○身分・報酬
・非常勤職員
・時給1120円(交通費支給)

○勤務日、勤務時間
・月曜日から金曜日までのうち週4日以内
年間160日以内(原則として長期休業中を除く)

○勤務時間
1日6時間(8時30分~17時15分までの内、校長の定める時間)

○主な業務内容
校長の監督と教員との連携のもとに学校図書館運営を担当する業務
・資料の分類、目録整備
・資料の貸出、整理
・児童生徒に対する読書指導、利用指導
・資料の選定、購入
・公立図書館との連携

○受験資格
司書もしくは司書補の資格を有する者、または平成30年3月31日までに取得見込みの者
※司書教諭資格のみの受験は不可

○選考区分、方法
・書類
・小論文
・面接

○備考
合格しても任用されないことがありますので、御了解ください。

※募集要項PDF


以上が、募集要項の内容です。

まず言えるのが、この職務内容は非正規という身分ではなく、正規職員として担うべき職責と言えるでしょう。補佐とかいうレベルではなく、完全な責任者レベルの内容です。事務作業のルーティンワーク、教員や生徒への支援や指導、外部連携など、マネジメント能力を駆使して行う内容です。

限られた予算の中での人材活用と言えば聞こえはいいかもしれませんが、裏を返せば、雇用側の都合ばかりを押し付け、期間限定で安く人材を活用したいわけです。

さらに制約が多すぎます。

・雇用期間が1年
・更新回数が4回まで(横浜市の場合)
・勤務日数が4日(さいたま市の場合)
・勤務時間が1日6時間まで
・合格しても採用される保証がない
・交通費が出ない(横浜市の場合)
・車通勤禁止(横浜市の場合)

勤務時間と日数が短く、職務をこなす時間として不十分ですし、1年という短期契約では人材が安定しません。こうした制約のもとで上記の職務を担えというのは、雇用側の都合を通り越し悪意と言えるでしょう。

採用過程も募集要項の詳細を見ればわかりますが、作文課題や実技もそれなりの難易度があります。

そして極めつけが、毎度お決まりの安い時給というオチ。横浜市は交通費も出ないというケチぶり。この職務内容で時給が1100円程度なんて、バカにするのも程々にしてもらいたいものです。この職務内容であれば、月給制で賞与・退職金も付けてもらいたいものです。

学校司書を設置し、直営で直接雇用している方針と姿勢は評価できますが、まともな待遇が出せずに高度な理想だけ掲げていても、人材が集まらず人出不足になり、早期離職も起こります。まだまだ、改善していく事が多くあるでしょう。今後もこの傾向が続き、この程度の低待遇と契約期間・勤務時間で職務を命じるなら、ブラック企業と同然です。

当サイトでは現時点において、この2つの募集へ応募する事は全くオススメしません。いつの日か、もっと待遇が良くなってから検討しましょう。もし、応募をされるなら、今後の契約や生活において自己責任で行う覚悟が必要です。

この記事へのコメント

  • 横浜市司書の夫

    妻が横浜市の小学校司書をやっております。
    仰るように、交通費出ない、健保・厚生年金加入は強制(私の扶養に入れない)、年間での勤務時間制限ぴったりに自分で調整しないといけない(多くても少なくてもだめ)と待遇面に関してはどうなの?と思う事ばかりです……。
    しかし、妻はやりがいを感じて続けていますし、他の学校の方もお金のため以上にやりがいのためにやられているようですね。
    2019年06月03日 14:25
  • 司書ひとり

    学校司書をしています。
    待遇はほんとうに馬鹿にしたものだと思います。
    どうしてこの現状で司書の皆さん唯々諾々と、そして中には勘違いの鼻高々で仕事しているのか不思議です。

    ただ唯一そして最大の救いは子供たちです。
    あの子たちのために明日も一人ぼっちでがんばります。
    2018年09月19日 18:17

スポンサードリンク