業務委託や指定管理が一般化している現在の公共図書館では、勤務する一般スタッフだけでなく、監督する館長ですら受託業者の人間によって担われているケースがある。通常、館長ともなれば、公務員にとっての最高ポストに匹敵するポジションであり、監督範囲や責任が重くなる。同時に年収は自治体にもよるが、平均すると700万円~800万円位はあるだろう。
一般スタッフだけでなく、館長のポジションですら委託化している理由として、人件費の削減が挙げられる。建前上は、「民間の柔軟なアイデアやノウハウを活かした図書館運営の実現」とほざいている自治体は多いが、運営や職員の管理を丸投げし、入札競争させ安い価格で落札する事を想定しているのが実情である。
まともな業界(会社)なら、こうした利益の出ないビジネスに手を出すことはしないのだが、図書館を取り巻く書店業やアウトソーシング業は、ビジネス感覚がズレているのか、歪んでいるのかで手を出してしまっている。そして、今の人手不足の時代にあっても、ズレた感覚で求人募集している。以下は、書店大手の丸善雄松堂が募集している、公共図書館館長募集の求人である。※一部、内容を省略。
【丸善雄松堂 公共図書館館長・マネージャー/契約社員 募集要項】
今回募集するのは、公共図書館の運営を最高責任者としてマネジメントしていただく館長職。今後の事業拡大に向けた人材育成の一環です。館長として就任していただく図書館での、最高責任者として活躍していただきたいと考えています。館長の下には実務レベルを担当する業務責任者がおり、現場スタッフを統率。チームでの図書館運営ですので、人間力を含めたマネジメントスキルを活かせます。
◆具体的な業務
・指定管理図書館全般の管理運営業務: カウンターでの貸出返却、利用者対応、配架、書架整理、自主事業の企画・実施等
・顧客との信頼関係構築
・年間運営計画の立案・提案、進捗状況管理
・運営全般を俯瞰した視点での組織マネジメント
・図書館での貸出・返却等の実務と顧客対応
・指定管理図書館全般の管理運営業務: カウンターでの貸出返却、利用者対応、配架、書架整理、自主事業の企画・実施等
・顧客との信頼関係構築
・年間運営計画の立案・提案、進捗状況管理
・運営全般を俯瞰した視点での組織マネジメント
・図書館での貸出・返却等の実務と顧客対応
◆求める人材
・図書館司書資格
・図書館勤務経験
・司書教論資格
・組織のマネジメント経験(小規模チームの責任者やリーダー経験でも可)
・Office系ソフトの基本操作
・図書館業務に興味がある方
・周囲と協調し、目標達成を目指すリーダーシップ
・臨機応変な対応力
・図書館司書資格
・図書館勤務経験
・司書教論資格
・組織のマネジメント経験(小規模チームの責任者やリーダー経験でも可)
・Office系ソフトの基本操作
・図書館業務に興味がある方
・周囲と協調し、目標達成を目指すリーダーシップ
・臨機応変な対応力
◆給与: 月給23万円以上
※試用期間3ヶ月あり(時給1400円)
初年度年収 300万円~400万円
※試用期間3ヶ月あり(時給1400円)
初年度年収 300万円~400万円
◆昇給・賞与: 昇降給は人事考課制度により決定
◆諸手当: 交通費支給(上限25,000円/月)
※引用元: マイナビ転職。募集は終了。
以上のように、求められる人材は、相当なキャリアやマネジメント能力がなければ、これらを遂行できないだろう。にもかかわらず、年収が300万円少々という、新卒~20代中盤程度が貰うような年収しか支払わない。しかも、ボーナスも退職金もあるんだか、ないんだか、わからないようなブラックぶりである。
こうした、管理職が担うような高いレベルの職務を安いギャラでしか雇用できないのは、会社がピンハネしているか、利益が出ないビジネスに無理やり参入しているかの、どちらかである。受託業者の契約社員という軽い身分。さらに、20代が貰うような年収で館長などする事は、惨め以外の何物でもない。真剣になって応募する案件ではない。
給料は安くてもいいから、やりがいだの、好きな事を仕事にできるだの、勘違いした変な使命感を持って応募する人間がいないことを願いたい。少なからず、そういう人間がいれば、会社はつけあがって労働者を安くコキ使うことになるから、労働対価に対する適正な市場相場を崩す要因にもなる。つまり、労働対価を無視した、やりがい人間は迷惑な存在である。
本気で公共図書館で働きたいのなら、正規の公務員試験に合格してキャリアを積み上げて頂きたい。
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