図書館委託業者の現実【2019年版・令和元年版】

今回は、2019年版・令和元年版として、図書館委託業務を受託請負している民間業者の最新現状を紹介する。過去記事と内容が重複する部分もあるが、できる限り更新した。管理人の持つ情報、多方面からの外部情報、求人サイトに掲載される内容を元にして、運営、求人内容、給料と福利厚生などを中心に書いてみた。

◆企業格差が広がり、勝ち組・負け組が鮮明に
委託業務が業界に浸透して久しいが、多くの業者が価格やサービス競争を繰り広げてきた昨今の戦国時代から、特定の業者が特定業種・業務を独占する傾向が見えてきたのが最近の特徴だ。強い業者は多くの案件を受注している。弱い業者は戦略が乏しく、稼げそうもないショボい案件をチマチマ受注しているのが現状である。ただ、勘違いしてはいけないのは、勝ち組と言っても、そもそも受注単価や契約金額が安いため、たいして稼げる商売ではないことだ。勝ち組でも、金融、建設、コンサル、医療といった高収益業界の足元にも及ばない。また、運営のマネジメント力とは相関関係がないので注意したい。どの業者にも言えることだが、受注案件数に関わらず、人手を確保することに苦労していることが伺える。

[勝ち組事例]
○公共図書館: 図書館流通センター(TRC)、ヴィアックス
○大学図書館: キャリアパワー、紀伊國屋書店、丸善雄松堂
○学校図書館: 図書館流通センター(TRC)

TRC、紀伊國屋、丸善は、元々、図書館との関わりがある企業だ。ヴィアックスは、新興企業の中では健闘している。キャリアパワーは、低価格契約を強行し受注数を大幅に増やしている。

[負け組事例]
○ナカバヤシ、ウーマンスタッフ、日本アスペクトコア、日本データベース開発、システムズデザイン、日本レコードマネジメント、図書館スタッフ、大新東ヒューマンサービス、日販図書館サービス(廃業)、その他の零細企業多数

近年は受注数を大幅に減らし、委託化の波に乗れなかった業者群である。中には、事業自体が継続されているのかすら実態が掴めない幽霊業者もある。運営や入札のノウハウ蓄積、継続的な人材育成と確保、入札に頼らない個別の営業活動といった、事業の継続や収益性を確保するためのシステム構築や努力を怠ったことが敗因だろう。


◆マネジメント力とノウハウに乏しく、委託の要求レベルに達していない未熟業者ばかり
業界全般の実態として、図書館流通センターを除いては、図書館運営のマネジメント能力が低い上にノウハウの蓄積が整理されておらず、中には皆無の業者が多く参入している。薄っぺらな戦略計画しか立てず、行き当りばったりの場当たり自転車操業運営が常態化し、事業としての方向性が迷走している。手法に知性がなく、人材を送り込んで現場任せにして委託手数料を稼ぐだけの商売をしている。

入札と契約書面上の表向きには、優秀な人材を保有し運営ノウハウがあると明記しているものの、内面的には虚偽と見栄ばかりで、現場トラブル、人手不足、契約内容との食い違いが多く発生しており、ウソを平気で言う始末である。詐欺商売に近いとも言える。


◆人材の募集、教育、研修がお粗末すぎる
待遇、福利厚生、採用、人材育成といった部分に投資せず、モチベーションやポテンシャルが高い人材を採用して教育し、長く定着させる意識が極めて低い。レベルにバラツキのある人材を量産的にかき集め、数の穴埋めのために人材不足の現場に送り込んだ後は放置だけの危うい運営をしている業者が極めて多い。むしろ、これが普通になっているから恐ろしい。結果として、安月給で働く現場スタッフに負担がかかる構図になっている。

近年は、夫の扶養範囲内で働ける主婦層や定年退職後の高齢者をターゲットに募集をする傾向が顕著になっている。これは、会社が社会保険を負担する義務がない事や短時間勤務でコストカットできるメリットがあるからだ。社会保険加入逃れのために期間限定の短時間労働者ばかりを雇用し、会社に都合の良い融通の効く人材を上手く活用している。

この業界の構造的な問題として、知的競争ではなく、価格競争をしている事が挙げられる。本来であれば、業務の質を高める努力や人材育成に力点を置き他社と差別化していくものだが、中途半端な能力しか持たないのに無理やり最安値で入札する業者が増えたため、低価格競争に巻き込まれる業界に成り下がってしまった。経営が厳しい会社が多く、ギリギリの人数で動かしている会社ばかりだ。

その弊害も相まって、安い人件費で経験、資格、語学力、IT知識、コミュニケーション能力などの即戦力人材を過剰に求める傾向は強まるばかりだ。個人の自己研鑽による自助努力、経験者頼みの運営が生命線だ。雇う側のエゴとしか思えない、支離滅裂で都合の良い一方的な要求を押し付けられる。会社は事務的な雇用管理だけして、営業社員が挨拶程度に現場に来るだけである。


◆人材不足に悩む図書館業界。コンビニ、飲食、介護業界と同じ現状。
人手不足や早期離職も顕著で、運営に必要な人材確保が難しくなっている。東京23区のような大規模自治体の委託案件を落札しても、必要人数が集められず苦慮しているケースが目立つ。契約開始後にも関わらず、リーダー募集が継続されている事もあり、契約違反ではないかと疑いたくなる。不足人材を他館や図書館関連部署以外からサポート要員として補充するなどの自転車操業している事が日常的になっている。大手業者ですらこうした有様で、元々人材の少ない零細業者となると、ペナルティー覚悟で契約を辞退せざるを得ない悲惨な状態の図書館もある。

人材確保のため、待遇改善や業界を離れている司書の採用・育成への投資に取り組む姿勢など微塵もない。今や人的にゆとりのある会社はなく、図書館業界の人手不足は、年中無休の風物誌となっている。一年中求人募集をしているところは、ブラック企業、ブラック職場だ。このように、人材獲得と育成の面で構造的に弱い欠陥だらけの業界が進む末路は見えている。


◆図書館ビジネスは成り立たなくなっている
図書館ビジネスは利益率が低く、価格競争が激しい業界だ。利益が低い上に価格が下落している悲惨なビジネスである。元々、儲かる構造になっておらず、本業の穴埋めや相乗効果を期待して参入しているケースがほとんどだ。儲からなければ撤退するのが民間企業だが、本業も収益力がないため、辞めるに辞められない。参入業者が少なかった頃は、かろうじて利益を上げられたが、多くの異業種が参入している現状では、ビジネスではなく慈善活動に近い形態になっている。特に書店系の場合は、危険水域に到達している。

安い労働力でしか成立しないビジネスは不要であり、近年の人手不足な状態では、事業そのものを考え直す必要があるだろう。人手不足になる背景には、契約形態、待遇・給料、福利厚生、労働環境、会社の方針、経営手法に何らかの欠陥があるからだ。会社の規模も中小零細企業ばかりで経営が思わしくなく、正社員ですら先行きが見えない。

◆受注する側の立場でなく、発注する側の立場でキャリア形成をしていくべき
当ブログは、最終的には正規職員として、公共図書館、国立大学図書館、私立大学図書館、専門図書館で勤務してもらいたいために、各種情報提供をしている。委託化が進んでも、経営の運営主体は図書館側であることに変わらず、そちらの立場(ポジション)で勤めなければ、キャリア形成や生活を維持していくことが困難だからだ。所詮、受注側の民間業者は、発注側である図書館の意向に従うだけの立場であり、何もコントロールできない。ハンドルは常に発注側が握っているのだ。

受注側の民間業者は、どこも経営環境が厳しいこともあり、継続して一つの会社に勤めることは難しく、職場の流動化は避け難い状況だ。短い勤続年数でキャリアが断絶した転職を繰り返す可能性も高く、失業なき労働移動ができない恐れもある。キャリアアップも収入増も期待できず、貧困のワーキングプアに陥りやすい。この業界の構造は、貧困を生み出しているとも言える。

他に行く当てもなく、何となく惰性でダラダラと年齢を重ねることは、できるかぎり避けるべきだ。何年も時間が止まったかのように、日々同じ環境で同じような仕事を繰り返していたら、将来的には痛々しい結果になるだろう。近年は、契約社員の5年縛りや派遣社員の派遣切りなどの問題も多く噴出している。

発注側に立ち、図書館全体をマネジメントしていけるような人材になる事を目指して欲しい。受注側の民間業者にいても、限られた仕事を契約年数内でダラダラ繰り返すだけの人生だ。

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